想いは実現する――経験が生み出す“本物の想い”
2025年3月 卒業する中学3年生へ送った言葉
「想いは実現する」って本当?
「想いは実現する」なんて言われても、正直なところ、最初は信じられない…という方も多いかもしれません。
でも、これは本当なんです。
その証拠に、私が今、この地に移住してきて、こうして皆さんの前でお話ししていること自体が、それを物語っています。
私は仙台で生まれ育ち、仙台で就職し、マイホームまで建てました。
誰がどう見ても、「一生仙台にいるんだろうな」と思うような人生だったと思います。
でも、今はここに居るのです。
これこそ、私自身の“想い”が現実になった結果なのです。
「移住」という選択に至るまで
話は5年前に遡ります。娘がこの地で山村留学を始めたのがきっかけでした。
受け入れ式、運動会、文化祭…行事のたびに瓜幕を訪れ、美しい風景、雄大な自然、そして何より地域の皆さんの温かさにふれるたびに、私はこう思うようになっていきました。
「ここで暮らしたら、どんなに幸せだろう」
その想いは年々大きくなり、やがて行動に移り、ついに家族で移住するという決断をしたのです。
想いが未来をつくる
私が伝えたいのは、“想い”が行動を生み、行動が未来を変えるということです。
では、その“想い”はどうやって生まれるのでしょうか?
二つの「おもい」
「おもい」という言葉には、2つの漢字があることにお気づきでしょうか?
- 「思う」=田んぼに心
- 「想う」=木に目に心
まず「思う」は、“頭で考える心”。つまり思考によって生まれる感情で、状況によってコロコロ変わります。
一方「想う」は、木(自然)や目(五感)を通じて得た感覚を、心で感じるもの。つまり、経験によって育まれる感情であり、もっと深く、身体の奥底から湧き上がる“無意識の想い”なのです。
無意識と経験の関係
脳科学では、人間の行動の90%以上は無意識が決めていると言われています。自分の意思で決めていると思っていることは、実はわずか10%程度にすぎないのです。
この無意識の行動の土台となるのが、「経験」。
経験を通して得た感情や感覚が、無意識の中に蓄積され、私たちの行動を自然に導いてくれるのです。
つまり、私がここに移住したのも、頭で考えた“思い”ではなく、この土地の自然や人々とのふれあいという“経験”が、深い“想い”となり、行動につながったのです。
だからこそ、経験が大事
卒業生の皆さん、高校生活が始まると、勉強・課題・部活・アルバイト…と忙しい日々が待っています。
効率や損得ばかりを考えるようになると、「思考」ばかりが優先されてしまい、経験から育つ“想い”が育ちにくくなってしまいます。
それはまるで、偏った食事で体調を崩すのと同じ。
思考ばかりに頼ると、心は固く、狭く、脆くなってしまいます。
今の皆さんは、大人と子どもの間にいる、とても大切な時期。だからこそ、失敗を恐れず、たくさんのことを経験してほしいのです。
一歩を踏み出す力を大切に
挑戦には、最初の一歩を踏み出す「意思の力」が必要です。
たった10%にも満たない、小さな力かもしれませんが、その一歩が経験となり、やがて“想い”となり、人生を動かす大きな原動力になります。
“想い”をしっかりと育ててください。
“想像”とは、“想い”を“人”が“象る”と書きます。
つまり、想像することが、想いを行動に変えるカギなのです。
想いと向き合う時間を持とう
今の世の中には、ゲームやSNS、漫画など、想いと向き合う時間を奪ってしまうものが溢れています。
でも、誰にでも平等に与えられているのが「時間」。
その時間をどう使うかは、あなた次第です。
想いは実現します。
その想いを育てるのは、他の誰でもない、「あなた自身」です。
どうかこれから始まる高校生活、そしてその先の未来も、自分自身の“想い”と向き合い、想像し、そして創造してください。